01 収入はそのまま所得ではない
所得税は、個人の暦年の所得をもとに計算します。給与、事業、退職金、年金を同じ式で処理するわけではありません。まず「どんな理由で受け取ったお金か」を決めます。
10種類の所得は名前の一覧だけで覚えず、継続的な仕事か、資産の利益か、一時的な受取かに分けて考えると使いやすくなります。

02 所得税の全体像と所得区分
年収と、税金を計算する金額は同じ?
『年収が400万円なら、400万円にそのまま税率を掛ければよい?』と考えたくなります。しかし、仕事で得た金額と、税金の計算に使う金額は同じではありません。所得税は個人の1年間の所得に対する税で、原則として1月1日から12月31日までを一つの年分として考えます。
最初に覚えるのは四つの箱です。収入は仕事などで生じた金額、所得はその収入の種類ごとのルールで計算した金額、課税所得は税率を適用する土台、税額は計算された税金です。手元の預金残高とは区別します。
二つの控除は、引く場所が違う
控除は『差し引くこと』です。所得控除は、社会保険料の負担など、その人の事情を反映するため、所得の合計から差し引きます。その後の課税所得に税率を適用して所得税額を計算します。一方、税額控除は、計算した所得税額から直接差し引く仕組みです。
所得控除が10万円増えても、税金が必ず10万円減るわけではありません。例えば課税所得が100万円から90万円になり、どちらも税率5%・速算表の控除額0円なら、税額の減少は10万円×5%=5,000円です。税額から引く控除と混ぜないことが大切です。
仕事と私用が混ざる支出は、仕事の部分を分ける
必要経費は、その事業の収入を得るための売上原価、販売費や管理費などです。店舗の家賃や従業員への給与などが例になりますが、事業主の私生活に使った費用は必要経費ではありません。
自宅兼事務所の通信費など、事業と私用が混在する場合でも、仕事に必要な部分を明らかに区分できれば、その部分が必要経費になります。例えば年間通信費10万円のうち、記録により事業分を60%と明確に区分できるなら、10万円×60%=6万円を計上します。
一時所得の金額と、合算する金額は別
まず、その年の一時所得の総収入から、収入を得るために直接支出した金額を引きます。さらに最高50万円の特別控除を引いた残りが『一時所得の金額』です。特別控除は差引後の残りが上限であり、控除だけで赤字を作るものではありません。
次に、一時所得の金額の2分の1を、給与などの他の総合課税の所得と合計します。問題文が『一時所得の金額』を求めているのか、『総所得金額に算入する金額』を求めているのかで答えが違います。50万円は各受取についてではなく、その年分を通じた控除です。
年数を確定してから、二つの式を選ぶ
退職所得控除の計算では、勤続期間の1年未満の端数を1年に切り上げます。例えば18年4か月なら19年です。年数を確定した後、20年以下と20年超のどちらの式を使うかを選びます。
20年以下の控除額は40万円×勤続年数で、計算結果が80万円に満たなければ80万円です。20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。21年目からの年数に70万円を掛けるので、全勤続年数に70万円を掛けるわけではありません。
同じ年金でも、差し引くものが違う
ミオの家族は、老齢厚生年金と自分で掛けた個人年金保険を受け取っています。どちらも定期的な入金ですが、所得を求める仕組みは同じではありません。まず年金の制度や契約を確認し、公的年金等か、それ以外の年金かを分けます。ここでは2026年分の所得を計算します。
老齢基礎年金・老齢厚生年金のほか、確定給付企業年金や確定拠出年金の老齢給付を年金で受け取る場合なども、税法上の公的年金等に含まれます。生命保険契約による個人年金は、それと別の区分です。「会社以外から受け取る年金は全部同じ」といった分け方はしません。
- 収入 − 必要経費など = 所得
- 所得 − 所得控除 = 課税所得
- 課税所得に税率 → 税額 − 税額控除
図は理解用の整理です。適用要件や最新の数値は本文と一次情報で確認してください。
03 所得区分の判定順
設問の受取額に「給与・事業・退職・年金」などのラベルを付け、必要経費や控除を引く前後の数字を分けます。退職金は勤続年数の端数を確認し、求められているのが退職所得か税額かを見ます。
04 例題で確認する
正解を選んだあと、全選択肢の理由まで確認しましょう。このページの回答履歴は保存しません。
問1
個人で靴の修理店を営む人が、事業の収入と所得を整理しています。青色申告特別控除はないものとします。事業所得の説明として、最も適切なものはどれですか。
正解:総収入金額から、事業の収入を得るために必要な経費を差し引いて計算する。
- A:適切です。事業所得の基本は、総収入金額から必要経費を引く計算です。この問題では青色申告特別控除はありません。
- B:不適切です。預金残高には過去の貯蓄や借入れなども影響します。その年の事業所得と同じ金額とは限りません。
- C:不適切です。私用の支出が、支出したという理由だけで必要経費になるわけではありません。事業との関係を分けて判断します。
問2
次のうち、原則として事業所得に該当するものはどれですか。各活動は記載の内容どおりで、特殊な事情はないものとします。
正解:小売店の事業として商品を販売して得る所得
- A:アパートの貸付けによる所得は、原則として不動産所得です。
- B:適切です。小売業の事業から生じる所得は事業所得に該当します。
- C:勤務先からの給与による所得は給与所得です。仕事の対価でも、すべて事業所得ではありません。
問3
一度だけ依頼されて書いた原稿の報酬は、受取が一回限りなので、労務の対価かどうかにかかわらず必ず一時所得になる。正しいですか、誤りですか。
正解:誤り
- A:誤りです。一時所得は、労務や役務の対価という性質を持つものを除きます。一回限りという理由だけでは決まりません。
- B:正しい判定です。原稿の報酬は労務・役務の対価としての性質を確認し、事業所得や雑所得などの区分を判断します。
問4
退職所得控除の計算上の勤続期間が16年2か月で、控除の調整や障害退職の加算がない場合、退職所得控除額はいくらですか。
正解:680万円
- A:16年に切り捨てて40万円を掛けています。1年未満の端数は切り上げます。
- B:適切です。16年2か月は17年として計算し、40万円×17年=680万円です。
- C:800万円は20年の場合の控除額です。この条件の年数は17年です。
05 要点をまとめる
- 収入から所得、課税所得、税額へ順に進む。
- 10種類の所得は受取原因で分類する。
- 一時所得は特別控除後の半分を総所得金額へ算入する場面を区別する。