01 不動産取引の前に確かめる
不動産を売るときの「仲介を頼む約束」と、買主と結ぶ「売買の約束」は別です。誰との契約かを見失わないようにします。
02 売買・賃貸・契約の流れ
重要事項説明は契約を決める前に受ける
一般の買主・借主は、売買や賃貸借の契約が成立する前に、宅建士から重要事項の説明を受けます。宅建士は、請求されなくても取引士証を提示して説明します。「契約書に署名した後で説明を聞けばよい」と順序を逆にしないことが大切です。
重要事項には、登記された権利、法令による利用制限、設備、代金や賃料以外に授受する金銭、契約解除など、取引の判断に関わる事項があります。買主と借主、土地と建物など取引の種類で説明事項は異なります。分からない条件は契約前に確認し、図面や説明書も手元に残します。
重ねて依頼できるか、自分で取引できるか
一般媒介は、他の宅建業者にも重ねて依頼できます。他の業者を明示する契約と、明示しない契約があります。専任媒介では他の業者への重複依頼はできませんが、売主が自分で見つけた相手との直接の取引はできます。
専属専任媒介では、他の業者への重複依頼ができず、自分で見つけた相手とも、依頼した業者を通さず売買することはできません。例えば「一社に任せたいが、親族に直接売る可能性は残したい」という希望と、「全てその業者を通す」という希望では、選ぶ契約が変わります。
上限額は、必ず支払う定額ではない
宅建業者が仲介によって契約を成立させたときの報酬には、法律に基づく上限があります。上限いっぱいを必ず支払うという意味ではなく、依頼時に上限の範囲内で合意します。また、売買の片方からの上限と、賃貸の両方を合わせた上限を混同しないことが大切です。
ここでは消費税率10%の課税事業者が行う仲介を扱います。売買の計算対象価格は、建物にかかる消費税等を除いた価額です。税込の売買総額を、そのまま計算対象にしないようにします。
金額の内訳と、公簿・実測の違い
売買代金には、土地と建物のそれぞれの金額、建物に消費税がかかる取引ならその税額が関係します。土地の譲渡は消費税の非課税取引です。建物でも個人の私的な自宅売却などは通常、消費税の課税対象外です。広告価格だけから税額を逆算せず、売主や契約の内訳を確認します。
公簿取引は登記簿の面積、実測取引は測量した面積を基に取引します。ただし「実測したから必ず精算」ではなく、差が出た場合の精算の有無と単価を契約で確かめます。例えば100㎡、1㎡当たり20万円、実測精算ありで実測が102㎡なら、差額は2㎡×20万円=40万円です。
まず約束どおりにする請求を考える
買主は原則として、修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しなどの履行の追完を請求できます。ただし買主側に原因がある不適合などでは、この原則をそのまま使えません。追完方法は内容や当事者の負担も関係し、買主の望む方法が常に唯一の方法になるわけではありません。
相当の期間を定めて追完を求めても行われない場合、原則として不適合の程度に応じた代金減額を請求できます。追完が不可能、売主が明確に拒む等の場合には催告を要しない例外があります。損害賠償や解除も別の要件の下で可能ですが、不具合があれば自動的に全て同時に認められるという意味ではありません。
駐車場のための賃借と、建物所有のための借地
土地を借りる契約の全てに、同じ借地借家法の保護があるわけではありません。ここで扱う借地権は、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権です。建物を建てない青空駐車場などは、この目的の借地と区別します。
借地借家法は1992年8月に施行されました。それ以前からの借地では旧借地法が関係し、存続期間等が異なる場合があります。次の数字は、新法による借地を前提とするものです。契約日を無視して古い借地へそのまま当てはめません。
定期借家は、方式と事前説明が大切
定期借家は、書面等による契約で更新がないことを定める制度です。契約前に、家主は借主へ更新がなく期間満了で終了する旨を、契約書とは別の書面等で説明する必要があります。法定の事前説明をしないと、更新がないという定めは無効になります。借主の承諾など所定の条件を満たせば電子化も可能ですが、説明自体を省略できるわけではありません。
期間1年以上の定期借家では、家主は期間満了の1年前から6か月前までに、終了する旨を通知します。通知が遅れた場合は、通知から6か月が過ぎるまで終了を借主に主張できません。更新はありませんが、双方が合意して新たな契約を結ぶ再契約は別に考えられます。
- 売主・買主が仲介を依頼する → 宅建業者と媒介契約
- 物件と契約条件を調べる → 宅建士の重要事項説明を契約前に受ける
- 売主と買主が売買契約を結ぶ → 代金・条件を確認
- 決済・登記・引渡し → 権利と代金を移す
図は理解用の整理です。適用要件や最新の数値は本文と一次情報で確認してください。
03 契約条件の見分け方
取引を「依頼→調査・重要事項説明→契約→引渡し→契約と異なるとき」に並べ、費用を売買代金・仲介手数料・税に分けます。借地は土地の用途、借家は終了時の手続を確認します。
04 例題で確認する
正解を選んだあと、全選択肢の理由まで確認しましょう。このページの回答履歴は保存しません。
問1
宅地建物取引業法の「宅地建物取引業」に当たる行為として適切なのはどれですか。いずれも記載した行為だけを継続して行うものとします。
正解:会社が他人の建物の賃貸借を業として仲介する。
- A:自ら貸す行為だけは、宅建業法の宅建業には当たりません。
- B:貸借の代理・媒介を業として行うことは宅建業に含まれます。
- C:自宅で暮らす行為は、売買・交換・代理・媒介のいずれにも当たりません。
問2
家を売る人が「いくつかの不動産会社へ同時に仲介を依頼したい」と考えています。この希望に合う媒介契約はどれですか。
正解:一般媒介
- A:専属専任媒介は他の業者への重複依頼ができません。
- B:専任媒介も他の業者への重複依頼ができません。
- C:一般媒介では複数の宅建業者へ重ねて依頼できます。
問3
消費税の課税事業者である宅建業者が、税抜売買価格1,500万円の物件を仲介しました。通常のルールによる、依頼者の一方から受領できる仲介手数料の税込上限はいくらですか。消費税率は10%とします。
正解:56.1万円
- A:1,500×3%+6=51万円は税抜報酬です。報酬にかかる消費税を加えます。
- B:1,500×3%×1.1であり、速算式の6万円を足していません。
- C:(1,500×3%+6)×1.1=56.1万円です。
問4
普通建物賃貸借契約の期間を6か月と書きました。借地借家法の原則に沿う説明はどれですか。
正解:1年未満の普通借家は、期間の定めがない契約と扱われる。
- A:普通借家で1年未満の期間を定めた場合の原則です。
- B:家主の終了には正当事由等が関係し、期間を書くだけでは済みません。
- C:期間が短いことだけで、定期借家の方式や説明を満たしません。
05 要点をまとめる
- 媒介と売買は異なる契約。
- 重要事項説明は契約を決める前。
- 仲介手数料は法定上限であり一律の定額ではない。
- 定期借地・定期借家は方式と終了条件を確認する。