01 土地・建物の情報を分ける
家を買うとき、広告の面積と登記記録の面積が違うことがあります。見た目だけで権利や境界を確定せず、複数の資料を重ねます。
02 権利・価格・登記の読み方
土地と建物、所有する権利と借りる権利を分ける
不動産は土地とその定着物であり、日本では土地と建物を別の不動産として扱います。土地付き一戸建てを買うのか、土地を借りて建物だけを所有するのかでは、取得する権利が違います。広告に家の写真があっても、土地の所有権まで売られているとは限りません。
所有権は法令の制限内で物を使用・収益・処分する権利です。借地権は、建物を所有する目的で土地を借りる権利で、土地そのものの所有権ではありません。住宅ローンなどの抵当権は、返済がされない場合に担保不動産から優先的な弁済を受けるための権利です。これらを同じ「持ち主」という言葉でまとめないようにします。
物件の表示、所有権、それ以外の権利を読む
登記事項証明書は、土地なら1筆、建物なら1個ごとの登記記録を確認する資料です。表題部には土地の地番・地目・地積、建物の構造・床面積など、物件を特定する情報があります。住所の住居表示と、登記上の地番が一致するとは限らないため、対象物件を取り違えないことが先です。
権利部の甲区には所有権に関する事項、乙区には抵当権など所有権以外の権利に関する事項が記録されます。例えば、地積を知りたいときは表題部、所有者を知りたいときは甲区、担保の設定を知りたいときは乙区を読みます。抹消された過去の記録と、現在有効な記録も区別します。
登記は権利を公示するが、取引の全てを保証しない
不動産の物権変動は、原則として登記を備えることで、第三者に対して自分の権利を主張できるようになります。この働きを対抗力といいます。売買の当事者間での合意と、第三者に対して権利を主張するための登記を分けて考えましょう。
一方、日本の不動産登記には公信力がありません。登記を信じて買ったという理由だけで、実際には権利を持たない人から当然に所有権を取得できるわけではありません。登記は重要な出発点ですが、相手方の本人確認、売却権限、現地の状態なども確認します。
土地の区画と、測量した面積を区別する
不動産登記法14条の地図は、土地の位置と区画を明らかにするための図面です。これが備え付けられるまでの間に用いられる「地図に準ずる図面」は、一般に公図と呼ばれます。古い公図には、現地を復元できるほどの精度がないものもあるため、図上の長さを測って購入面積を確定する使い方はできません。
地積測量図は、測量した土地の形状、地積、その計算方法などを確認する資料です。ただし、全ての土地に新しい測量図があるわけではありません。作成年、境界点、隣接地、登記上の地積と現地の状況を照らし合わせ、不明な境界は専門家や関係者に確認します。
同じ土地に違う価格があっても不思議ではない
土地を調べると、売出価格のほかに、公示価格、基準地価格、路線価、固定資産税評価額が出てきます。数字が違う理由は、調べた時点や評価の目的が違うからです。どれか一つが唯一の正しい売買代金というわけではありません。
売出価格は売主の希望であり、成約価格は実際の取引で合意した価格です。公的な価格は取引の参考や課税の基礎に使われます。資料の見出し、対象年、1㎡当たりか土地全体の金額かを最初に確認します。
費用・比較・収益を見分ける
原価法は、評価する時点で同じような不動産を再びつくるときの費用である再調達原価を求め、経年などに応じた減価修正をする方法です。過去に購入した金額をそのまま使う方法ではありません。得られる価格を積算価格といいます。
取引事例比較法は、似た不動産の取引事例を選び、取引事情、時点、地域や個別条件の違いを調整する方法です。得られる価格は比準価格です。近所の売出広告を一つ見つけ、その金額を無調整で採用することとは違います。
収益還元法は、不動産が将来生むと期待される純収益に着目する方法で、得られる価格は収益価格です。一定期間の純収益を還元利回りで割る直接還元法と、将来の各年の収益や売却による収入を現在価値に割り引くDCF法があります。
- 所有者・抵当権などの権利 → 登記事項証明書
- 土地の位置・形の手掛かり → 公図等。境界の確定には別の調査が必要
- 価格の目安 → 公示価格・基準地価格。基準日と評価目的を確認
図は理解用の整理です。適用要件や最新の数値は本文と一次情報で確認してください。
03 資料を調べる順番
調べる目的を先に決めます。所有者と権利は登記、面積・形状は図面と測量、利用制限は行政情報、状態は現地を確認します。一つの資料だけで全部を保証しません。
04 例題で確認する
正解を選んだあと、全選択肢の理由まで確認しましょう。このページの回答履歴は保存しません。
問1
売買資料には「建物の所有権を譲渡する。敷地は第三者から借りており、買主が借地契約を承継する」とあります。この資料から読み取れることとして適切なのはどれですか。
正解:土地は借りる権利、建物は所有する権利を区別して確認する必要がある。
- A:資料は土地の所有権の譲渡を示していません。土地と建物の権利は別です。
- B:建物所有権と土地を借りる権利の組合せです。借地契約の内容や承継に必要な手続も確認します。
- C:借地権は建物所有目的で土地を借りる権利です。担保としての抵当権とは異なります。
問2
購入候補の土地について、隣接する土地との位置関係は古い公図で分かりました。担当者から「この公図の線を定規で測るだけで、売買する土地の正確な面積が確定する」と言われました。この説明は適切ですか。
正解:誤り
- A:古い公図には精度の限界があり、図上の長さだけで正確な面積を確定できません。
- B:地積測量図や境界、現地などを確認する必要があります。公図と正確な測量を同じものとして扱わないことが重要です。
問3
資料Aは土地鑑定委員会による標準地の公示価格、資料Bは都道府県知事による基準地価格です。評価時点の組合せとして適切なのはどれですか。
正解:Aは1月1日、Bは7月1日
- A:公表される時期と評価時点を混同しています。
- B:AとBの評価時点が逆です。
- C:公示価格は1月1日、基準地価格は7月1日時点の価格です。
問4
①現在の再調達原価から減価修正する、②類似取引の条件差を調整する、③将来期待される純収益に着目する。価格を求める手法の組合せとして適切なのはどれですか。
正解:①原価法、②取引事例比較法、③収益還元法
- A:それぞれ費用、取引の比較、収益という出発点に対応します。
- B:再調達原価は取引事例ではなく、類似取引も将来純収益そのものではありません。
- C:将来純収益を使う収益還元法、再調達原価を使う原価法、類似取引の比較が入れ替わっています。
05 要点をまとめる
- 土地と建物は権利も登記も別。
- 登記は権利を公示するが現地の状態の保証ではない。
- 公的価格には目的・基準日が違う複数のものがある。
- 評価の三手法は費用・比較・収益を見る。