01 分け方をどう決める?
家族図で相続人が決まっても、実際の家を物理的に半分にできるとは限りません。まず遺言の有無と財産を確認し、誰が何を取得するかを話し合います。

02 遺言・遺産分割・備え
協議は、相続人全員で決める
相続人全員の話合いで分け方を決めるのが協議分割です。法定相続分とは異なる割合でも、全員が合意すれば分割できます。多数決で少数の相続人を外す方法ではありません。
例えば相続人が子3人なら、戸籍で3人が全員であることを確かめ、預金残高や不動産の資料をそろえます。2人だけが自宅と預金の分け方に賛成しても、残る1人を除いたまま協議成立とはしません。合意内容は遺産分割協議書に整理し、名義変更などの資料に使います。
売って分けるか、一人が取得して支払うか
換価分割は、遺産を売却し、その代金を分ける方法です。売って現金にするので金額の調整はしやすくなりますが、その財産は手元から離れます。売却価格、手数料や税金などを考えず、評価額がそのまま分けられる現金になると決めつけないようにします。
代償分割は、一人などが遺産の現物を取得し、その代わりに他の相続人へ代償金などを負担する方法です。自宅を残して住み続けたい場合にも検討されますが、取得する人には代償金を支払う資金が必要です。売却して得た代金を分ける換価分割とは、お金の出どころが違います。
自筆証書は、本文と財産目録を分ける
自筆証書遺言は、原則として本文の全文、日付、氏名を本人が手書きし、押印します。証人の立会いは必要ありません。「誰にどの財産を残すか」という本文をパソコンで入力し、氏名だけ手書きしても、自筆証書の方式を満たしません。
添付する財産目録は例外で、パソコン作成や通帳の写しなどを使えます。ただし、本人が目録の各ページに署名し、押印する必要があります。手書きでない記載が両面にあれば両面に行います。目録を印刷できるようになったことを、遺言本文もすべて印刷できるという意味に広げないことがポイントです。
例えば、預金口座の一覧だけを印刷し、各ページへ本人が署名押印したうえで、その財産を誰に残すかという本文と日付・氏名を自書して押印する形です。財産が多くても、方式を緩めてよい部分と本人が書く部分を分けて整理できます。
公正証書は、公証人が本人の意思を確認する
公正証書遺言は、公証人が遺言者本人の意思を確認し、内容を公正証書にまとめる方式です。法定の証人は2人以上で、通常の公証実務では2人が立ち会います。未成年者、推定相続人、財産を遺贈される人、その配偶者や直系血族などは証人になれません。
本文を遺言者がすべて自書する方式ではありませんが、他人が代理で意思決定できるわけでもありません。公正証書の電子化後も、本人の意思確認と証人の手続は必要です。手書きの負担が少ないことと、確認手続がなくなることを区別します。
全体の遺留分に、一人の法定相続分を掛ける
相続人が直系尊属だけの場合、全体の遺留分の割合は3分の1です。それ以外で遺留分権利者がいる場合は2分の1です。一人の割合は、この全体の割合に、その人の法定相続分を掛けて求めます。法定相続分をそのまま遺留分としたり、権利者全員へ全体の割合を一つずつ与えたりしません。
配偶者と子2人なら、配偶者の割合は1/2×1/2=1/4、子1人は1/2×1/4=1/8です。計算の基礎となる財産が8,000万円なら、配偶者は2,000万円、子は1人1,000万円となります。直系尊属だけで父母2人なら、それぞれ1/3×1/2=1/6です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人なら、配偶者は1/2×3/4=3/8です。兄弟姉妹に権利がないからといって、その分を配偶者へ付け足して1/2とするわけではありません。これらは遺留分の額であり、既に受け取った財産などがあれば、実際の侵害額はさらに調整します。
自宅を全部もらうと、生活費が残らない?
配偶者が自宅を相続すると、ほかの預金を受け取れる余地が小さくなる場合があります。住まいと生活費の両方を確保する選択肢が、配偶者居住権です。建物の所有権を別の相続人が取得し、残された配偶者は無償で使い続ける権利を取得する、と分けられます。家そのものを所有する権利とは異なります。
配偶者居住権では、法律上の配偶者が相続開始時に被相続人の財産である建物に住んでおり、遺産分割や遺贈などによってその権利を取得することが必要です。住んでいた事実だけで、長期間の居住権が必ず自動的に生じるわけではありません。被相続人が配偶者以外の人と建物を共有していた場合は、この制度の対象外です。
争いを避ける準備
財産と負債の一覧、連絡先、希望を整理し、手続をする人を決めます。遺留分や税だけを理由に一つの分け方へ決めつけず、住む人の生活費と納税資金を確認します。
- 相続開始 → 期限のある手続を確認
- 相続人と財産を調べる → 家族関係と債務も確認
- 遺言を調べる → 有効な遺言の内容と執行を確認
- 必要な手続を進める → 申告・登記等の期限を別途確認
- 遺産分割 → 相続人間で分け方を決める
図は理解用の整理です。適用要件や最新の数値は本文と一次情報で確認してください。
03 相続全体を見直す順番
遺言があるか→相続人全員と財産・負債を確認→分割方法を選ぶ→登記や税の期限を確認、の順に並べます。法定相続分は比較の土台であり、すべての財産をその比率で現物分割する義務ではありません。
04 例題で確認する
正解を選んだあと、全選択肢の理由まで確認しましょう。このページの回答履歴は保存しません。
問1
有効な遺言で『自宅は長女に相続させる』と指定されていますが、別にある預金については分け方の指定がありません。ほかに預金の分け方を決めた合意等もない場合、適切な確認はどれですか。
正解:自宅の指定と、預金の分け方が未確定であることを分けて確認する。
- A:不適切です。自宅の指定だけから、記載されていない預金の取得者まで自動的に決まるわけではありません。
- B:適切です。遺言が指定した財産と、分け方の決まっていない財産を分けます。
- C:不適切です。被相続人は有効な遺言により分割の方法を指定できます。
問2
相続人の長男が遺産の土地を取得し、長女には長男自身の預金から代償金を支払うことで合意しました。土地は売却しません。この分割方法はどれですか。
正解:代償分割
- A:不適切です。換価分割は遺産を売却して代金を分けます。この問題では土地を売っていません。
- B:適切です。現物を取得する長男が、他の相続人の長女へ自分の資金から代償金を支払います。
- C:不適切です。土地は長男が取得し、長女は代償金を受け取るので、土地を両者が共有する方法ではありません。
問3
通常の自筆証書遺言は、財産を誰に残すかという本文をパソコンで作り、日付と氏名だけを本人が手書きして押印すれば、本文の自書要件を満たす。
正解:誤り
- A:自筆証書の本文は本人の手書きが必要です。氏名と日付だけを手書きしても足りません。
- B:手書きを省けるのは、所定の署名押印をする添付財産目録です。財産の帰属を決める本文には広げられません。
問4
相続人が被相続人の妻と弟である場合、弟にも法定相続分があるため、弟は遺留分を有する。
正解:誤り
- A:法定相続分があることと、遺留分があることは別です。
- B:兄弟姉妹には遺留分がありません。
05 要点をまとめる
- 遺言の方式と効力を確かめる。
- 遺産分割協議は相続人全員で行う。
- 代償分割は取得者の支払資金も必要。
- 遺留分・住まいの権利は対象者と要件を確認する。