01 どこから差し引く控除?
家族の医療費や保険料を払ったとき、何でも同じ控除に入るわけではありません。「誰が払ったか」「対象者は誰か」「何年分か」を決めることから始めます。
控除を増やすと、その金額がそのまま税額から引かれるのではなく、税率を適用する前の土台が小さくなります。
02 所得控除の対象と計算
二つの控除は、引く場所が違う
控除は『差し引くこと』です。所得控除は、社会保険料の負担など、その人の事情を反映するため、所得の合計から差し引きます。その後の課税所得に税率を適用して所得税額を計算します。一方、税額控除は、計算した所得税額から直接差し引く仕組みです。
所得控除が10万円増えても、税金が必ず10万円減るわけではありません。例えば課税所得が100万円から90万円になり、どちらも税率5%・速算表の控除額0円なら、税額の減少は10万円×5%=5,000円です。税額から引く控除と混ぜないことが大切です。
保険の対象者と、支払った人を分ける
家族の国民年金保険料をまとめて支払ったとき、控除を受ける人は保険証や年金の名義だけでは決まりません。社会保険料控除では、本人、または本人と生計を一にする配偶者その他の親族が負担すべき保険料を、実際に支払った人が控除を受けます。生計を一にするとは、日々の生活費などを共通にしている関係です。
例えば、同じ家計で生活する学生の子の国民年金保険料を親が支払った場合、親の社会保険料控除の対象になります。一方、配偶者の公的年金から天引きされた介護保険料は、その配偶者が支払ったものです。主に生活費を出しているからという理由だけで、もう一方の配偶者の控除へ移すことはできません。
確定拠出年金の掛金は、別の控除欄
iDeCoの本人の掛金や、企業型確定拠出年金で加入者本人が拠出する掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象です。小規模企業共済の対象契約の掛金や、地方公共団体の一定の心身障害者扶養共済制度の掛金も、この控除に含まれます。その年に支払った対象掛金の全額を控除します。事業者が支払う企業型年金の事業主掛金を、従業員本人の支払額へ足すものではありません。
例えば、本人の対象社会保険料が60万円、本人のiDeCo掛金が年24万円なら、社会保険料控除60万円と小規模企業共済等掛金控除24万円に分けます。合わせた所得控除は84万円ですが、二つの欄に同じ24万円を重複して入れません。制度の名称に「年金」が含まれていても、国民年金基金とiDeCoでは控除欄が違います。
自宅の保険料なら、全部が控除?
火災保険と地震保険を一緒に契約していても、支払った全額が自動的に所得控除になるわけではありません。地震保険料控除は、一定の損害保険契約の地震等による損害を補う部分の保険料などが対象です。通常の火災補償部分まで地震保険料へ足さず、保険会社等が発行する控除証明書で対象金額を確認します。
対象となる資産は、本人または生計を一にする配偶者その他の親族が所有し、常時住んでいる家屋や、通常の生活に必要な家具などです。事業用建物の損害保険料を、家族の住宅の地震保険料と同じ所得控除へ一括するのは適切ではありません。ここでは所得税の控除額を扱います。住民税には別の計算・上限があるため、数字を取り違えないようにします。
支払保険料を、証明書の区分へ置く
生命保険料控除は、対象保険料の支払について一定額を所得から引く制度です。支払額が全額そのまま引けるとは限りません。一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の区分と、新契約・旧契約の表示を控除証明書で確認するところから始めます。この教材は、23歳未満の扶養親族を有する場合の特例を使わない通常の所得税の計算です。特例は次の教材で扱います。
原則として2012年1月1日以後に締結したものが新契約、2011年12月31日以前が旧契約です。新契約の医療保険は介護医療保険料の区分ですが、対象の旧契約の医療保険は旧生命保険料に含まれます。商品名だけで新しい医療控除へ移しません。払込者と保険金の受取人の関係などの対象条件もあり、保険料を払えばどんな契約でも使えるわけではありません。
最後に、三つの区分の総額を確認する
区分ごとの控除額が決まったら合計し、生命保険料控除全体の最高12万円を適用します。例えば、一般が旧契約だけで5万円、介護医療4万円、個人年金が旧契約だけで5万円なら、合計14万円から上限を使って12万円です。給与所得者は年末調整、又は確定申告で必要な申告と証明を行います。同じ保険料を一般と介護医療の両方へ入れないことも確認しましょう。
家族に関する控除は人数だけで決めない
配偶者控除・扶養控除などは、本人と家族の所得、年齢、関係、年分が要件になります。家族として同居しているというだけでは自動的に適用されません。基礎控除も対象年分の制度を確認します。
- 収入 − 必要経費など = 所得
- 所得 − 所得控除 = 課税所得
- 課税所得に税率 → 税額 − 税額控除
図は理解用の整理です。適用要件や最新の数値は本文と一次情報で確認してください。
03 控除要件の確認順
控除証明書の名称だけで決めず、保険料の種類・契約日・負担した人をメモします。年度改正がある額は、試験の法令基準日と所得が生じた年を分けて確認します。
04 例題で確認する
正解を選んだあと、全選択肢の理由まで確認しましょう。このページの回答履歴は保存しません。
問1
同じ家計で暮らす学生の子の国民年金保険料を、親が自分の資金で実際に支払った。この保険料は誰の社会保険料控除の対象になりますか。
正解:支払った親の控除の対象になる
- A:保険料の対象となる子の名義だけで、控除する人を決めるものではありません。
- B:生計を一にする親族の負担すべき対象保険料を支払った親の控除です。
- C:同じ支払を二人が重複して控除することはできません。
問2
控除証明書に、対象の地震保険料3万6,000円と記載がある。別に通常の火災補償部分2万4,000円を支払っており、旧長期損害保険の経過措置はない。所得税の地震保険料控除額はいくらですか。
正解:3万6,000円
- A:火災補償部分まで合算しています。対象は地震保険料です。
- B:対象の地震保険料が5万円未満なので、常に上限額を使うわけではありません。
- C:対象の3万6,000円は5万円以下のため、その全額を控除します。
問3
2011年に締結した対象の医療保険契約で、更新等はなく、控除証明書にも旧制度と表示されている。この保険料の区分として適切なのはどれですか。
正解:旧生命保険料として計算する
- A:旧契約の対象医療保険料は、旧生命保険料に含まれます。
- B:介護医療保険料の独立区分は新制度であり、旧契約を自動的に移しません。
- C:民間の医療保険料と、公的な健康保険料は別の控除です。
05 要点をまとめる
- 所得控除は税率を掛ける前に引く。
- 社会保険料と小規模企業共済等掛金は別の欄。
- 生命保険料控除は新旧契約と区分を分ける。
- 家族関係の控除は所得・年齢・年分を確認する。