01 赤字を通算できる?
所得から所得控除を引いた課税所得に税率を適用し、速算表の控除額を差し引きます。その後に条件を満たす税額控除を引きます。すでに源泉徴収された額は、最終的な納付・還付の精算に関係します。
税率表は同じ税率を収入全部に掛ける表ではありません。求める数字が課税所得、税額、申告納税額のどれかを確かめます。
02 税額計算・控除・確定申告
赤字を通算できるかを先に確認
損益通算は赤字なら何でも他の所得から引く制度ではありません。不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得などでも損失の原因や資産により例外があります。所得区分を決め、通算できる損失かを確認してから課税所得の計算へ進みます。
例えば不動産所得が赤字でも、土地取得のための借入利子に相当する部分などは通算できません。赤字の額をそのまま給与から差し引かず、国税庁の対象と除外条件を読みます。
四つの箱を順にたどる
2025年分について、表の修理店の例を計算します。ほかの所得や青色申告特別控除はなく、所得控除と税額控除は適用要件を確認した後の金額が与えられているものとします。個別の控除額を暗記する例ではありません。
まず420万円-170万円=所得250万円。次に250万円-150万円=課税所得100万円。100万円に適用する税率は5%、速算表の控除額は0円なので、100万円×5%=5万円です。最後に税額控除1万円を引き、税額控除後の所得税額は4万円となります。この例では、課税所得の1,000円未満の切捨ては生じません。
これは所得税本体の計算です。復興特別所得税や、すでに源泉徴収・予定納税した額との精算は含めません。税率はすべての金額に一律5%ではなく、金額の区分によって変わります。
数字の名前と、引いた場所を確認する
資料を読むときは、金額の横に『収入・所得・課税所得・税額』のどれかを書いてみましょう。控除を見つけたら、所得から引くのか税額から引くのかを確かめます。この順番が分かれば、計算が合わないときも、どの段階へ戻って確認すればよいか分かります。
個人の所得を、暦の1年で整理する
所得税は、個人の所得に対してかかる国税です。会社にかかる法人税とは、納税義務者も所得をまとめる期間も分けます。個人の所得税では、原則として毎年1月1日から12月31日までの1年分を計算します。勤務先の決算月や、自分が店を開いた月からの12か月を自由に選ぶ仕組みではありません。
例えば、2026年分の確定申告では2026年の1月から12月までの所得などをまとめ、通常は翌年に申告します。年の途中で転職しても、その年分を前の勤務先と後の勤務先で別の年分へ分けるわけではありません。申告では、所得から計算した税額と源泉徴収などで既に納めた税額を精算します。申告が必要かどうかの詳しい条件は、後の申告の教材で確認します。
税額控除は税額から差し引く
住宅借入金等特別控除などの税額控除は、所得控除と違って計算後の税額から差し引く仕組みです。適用には住宅の取得・入居年・床面積・所得など個別要件があり、住宅を買っただけで一律に使えるわけではありません。
年末調整と確定申告
給与所得者には年末調整で税額を精算する人がいます。一方、所得の種類や医療費控除など、確定申告が必要または申告によって控除を受ける場面もあります。源泉徴収票は収入、控除、すでに徴収された税額を確認する資料です。
- 収入 − 必要経費など = 所得
- 所得 − 所得控除 = 課税所得
- 課税所得に税率 → 税額 − 税額控除
図は理解用の整理です。適用要件や最新の数値は本文と一次情報で確認してください。
03 源泉徴収から精算まで
例題では「収入→所得→課税所得→算出税額→税額控除後→納付・還付」の欄を作ります。速算表の税率・控除額は指定された年分のものを使い、途中の単位と端数処理を確かめます。
04 例題で確認する
正解を選んだあと、全選択肢の理由まで確認しましょう。このページの回答履歴は保存しません。
問1
花材店を営む人の2025年分の資料は表のとおりです。事業所得以外の所得と青色申告特別控除はなく、表の所得控除・税額控除は適用要件を確認済みです。税額控除後の所得税額はいくらですか。復興特別所得税、源泉徴収税額や予定納税額との精算は考えません。
| 項目 | 金額・条件 |
|---|---|
| 総収入金額 | 390万円 |
| 必要経費 | 160万円 |
| 所得控除の合計 | 110万円 |
| 計算で使う税率・速算表の控除額 | 5%・0円 |
| 適用できる税額控除 | 2万円 |
事業所得のみ。青色申告特別控除なし。控除額は適用要件を確認済みの金額。復興特別所得税・源泉徴収等の精算は考えません。
正解:4万円
- A:不適切です。6万円は課税所得120万円×5%で求めた税額控除前の所得税額です。さらに税額控除2万円を引きます。
- B:適切です。390万円−160万円−110万円=課税所得120万円、120万円×5%−2万円=4万円です。
- C:不適切です。8万円は、所得税額6万円に税額控除2万円を足した結果です。税額控除は税額から差し引くので、6万円−2万円と計算します。
問2
個人事業者が2026年7月に開業した。所得税を計算する年分の扱いとして、適切なのはどれですか。
正解:2026年分は、原則2026年1月1日から12月31日までの暦年で整理する
- A:個人の所得税では、開業月から12か月という期間を自由に選べません。
- B:所得税の年分は暦年です。実際の事業開始が年の途中でも、年分の区切りは変わりません。
- C:取引先の決算月は、本人の所得税の年分を決める基準ではありません。
問3
課税所得を求めて税率を掛けた後、適用要件を満たす税額控除がある。差し引く位置として正しいものはどれか。
正解:計算した所得税額から引く
- A:税額控除を収入から引くのは計算順が違う。
- B:税額控除は算出された所得税額から差し引く。
- C:前年の収入欄を書き換える仕組みではない。
問4
給与から所得税が源泉徴収されている人が、医療費控除を受けたい。まず確認する対応として適切なのはどれか。
正解:対象となる医療費や他の条件を確認し、必要な確定申告の手続を調べる
- A:源泉徴収済みでも、申告で適用する控除がある。
- B:医療費控除の対象・計算・申告要件を確認する。
- C:給与の月額から医療費全額を直接差し引く制度ではない。
問5
賃貸不動産の所得が赤字になった。赤字の中に土地の取得に用いた借入金の利子に相当する部分が含まれる。給与所得との損益通算を考えるとき、最も適切な対応はどれか。
正解:対象となる損失と、土地取得借入利子に相当する通算対象外部分を分ける
- A:不動産所得の赤字でも、通算対象外となる部分がある。
- B:土地取得に要した負債利子に相当する損失は、損益通算から除外される。
- C:給与所得があることだけで不動産所得の損益通算が全て禁止されるわけではない。
05 要点をまとめる
- 損益通算は所得区分と損失原因を確認してから行う。
- 税率を適用するのは課税所得。
- 税額控除は算出した税額から引く。
- 源泉徴収は最終納税額と分けて考える。
- 申告義務・控除の手続は所得の種類と年分で確認する。