01 贈与は誰から誰へ?
二人から贈られた場合、暦年課税の基礎控除を贈与者ごとに二度使うわけではありません。受贈者がその年に受け取った財産を合算して考えます。

02 贈与税の課税と制度
一人で決めただけでは、契約にならない
親が心の中で財産を子へ渡すつもりでも、それだけで贈与契約が成立するわけではありません。贈与は、財産を無償で与える意思を示し、相手が受け入れることで成立する契約です。与える人を贈与者、受け取る人を受贈者といいます。本人同士の合意と、その合意に基づく財産の移動を区別します。
通常の贈与契約は口頭でも成立します。書面がなければ全て無効、という制度ではありません。一方、相手の知らないところで受取人名を決めたり、将来あげたいという気持ちを記録しただけでは、相手の受諾を確認できません。契約の当事者、財産、約束した内容を明確にしておくことが、後の行き違いを減らします。
毎回決める贈与と、継続する約束
特別な条件や負担を付けず財産を無償で渡す基本形に対して、継続して給付する約束などを付けた贈与もあります。定期贈与は、毎月一定額を渡すなど、定期の給付を目的とする贈与です。民法の原則では、贈与者または受贈者が死亡すると効力を失います。ここでは別の定めがない基本を扱います。
税務上は、毎回独立して贈与を決める場合と、最初から一定期間の給付を約束する場合で、取得したものが違います。後者は将来にわたり給付を受ける権利が課税対象となるため、その年に振り込まれた額だけで判断しません。振込が毎年同額かどうかだけで断定せず、最初にどのような契約をしたかを確認します。
財産をもらう代わりに、負担を引き受ける
負担付贈与は、受贈者に一定の債務などを負担させる条件で財産を贈与するものです。土地をもらう代わりに贈与者の借入金を引き受ける場合などが当たります。財産を受け取る側にも義務があるので、単に贈与者の好意に感謝する気持ちとは区別します。民法では、性質に反しない範囲で双方が義務を負う契約の規定も適用されます。
個人から負担付贈与を受けた場合、贈与財産の価額から負担額を差し引いた価額が課税価格となります。土地・建物等では通常の取引価額を基にする点が重要です。通常の土地の相続税評価額を、そのまま当てはめる計算ではありません。それ以外の財産では、原則として相続税評価額を基に負担額を差し引きます。
例えば、通常の取引価額2,400万円の土地を贈与され、800万円の債務を引き受けるなら、2,400万円−800万円=1,600万円がこの贈与の課税価格です。この金額は贈与税そのものではなく、基礎控除等を引く前の段階です。贈与者側も、負担額で財産を譲渡したことになり、譲渡益があれば所得税の対象となる場合があります。
贈った人数ではなく、受け取った人で集める
暦年課税の贈与税は、受贈者が1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の価額を合計し、原則110万円の基礎控除を引いて計算します。贈与税を申告・納付するのも、贈った人ではなく受け取った人です。ここでは国内での通常の暦年課税を扱い、相続時精算課税や住宅資金等の別の特例は使わない前提です。
基礎控除は、受贈者一人につき1年間で110万円です。父と母からそれぞれ受け取っても、贈与者ごとに110万円ずつを引くのではありません。例えば、父から70万円、母から80万円の対象贈与なら、合計150万円−110万円=40万円が税率表へ入れる金額です。非課税となる通常の生活費等は、対象贈与の集計と別に確認します。
110万円を引いた後で、表を使う
一方の区分の贈与だけなら、基礎控除後の金額に、その区分の表の税率を掛け、速算控除額を引きます。速算控除は、税率が段階的に上がる計算を一つの式で表すための額です。最初に引く110万円の基礎控除とは別物なので、両方の段階を省略せずに書きます。金額が110万円以下なら、通常の暦年課税では贈与税は生じません。
例として、年初22歳の人が祖父から710万円だけ贈与され、他の特例等がなければ、710万円−110万円=600万円です。特例表の600万円以下の段から、600万円×20%−30万円=90万円を求めます。同じ710万円を兄から受けたなら一般表を使い、600万円×30%−65万円=115万円です。金額だけでなく、誰から受けたかによって使う表が変わります。
一般贈与と特例贈与の両方が同じ年にある場合は、それぞれ単独の贈与として110万円を引く計算ではありません。合計額を基に一般・特例それぞれの仮の税額を計算して配分するため、次の教材で別に手順を確認します。
相続時精算課税は選択の効果を確認
相続時精算課税では、選択した贈与者からの贈与について暦年課税とは別の仕組みを使います。令和6年以後の年110万円の基礎控除など、いつの贈与かで扱いが変わります。一度選ぶと原則としてその贈与者について暦年課税へ戻れないため、将来の相続まで見通して考えます。
03 年額と適用要件の見分け方
誰から、誰へ、いつ、何を、いくら贈ったかを一行ずつ記録します。暦年課税では受贈者の1年分を合計して110万円を引き、一般税率か特例税率かは関係と年齢を確認します。
04 例題で確認する
正解を選んだあと、全選択肢の理由まで確認しましょう。このページの回答履歴は保存しません。
問1
いずれの当事者も意思能力のある成年とする。通常の贈与契約が成立したと判断できるのはどれですか。
正解:Aさんが自分の時計を無償で渡すとBさんへ伝え、Bさんが口頭で受け取ることを承諾した
- A:贈与者一人の準備であり、相手の受諾がありません。
- B:無償で与える意思表示と受諾がそろっています。通常は口頭でも成立します。
- C:相手が受け入れておらず、合意が成立していません。
問2
定期的な給付を目的とする贈与契約で、死亡時について別の定めはない。民法上、原則として効力を失う事由はどれですか。
正解:贈与者または受贈者が死亡すること
- A:住所変更だけを、定期贈与の効力が当然に失われる事由とはしていません。
- B:定期贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって効力を失うのが原則です。
- C:受取口座の変更それ自体を、契約が当然に終わる事由とはしていません。
問3
2026年に一人の受贈者が、父から90万円、母から60万円の現金贈与を受けた。全て通常の暦年課税で、非課税特例等はない。税率表へ入れる基礎控除後の金額はいくらですか。
正解:40万円
- A:父母それぞれに110万円を引いてはいけません。
- B:合計150万円から、受贈者について年110万円を一度引きます。
- C:基礎控除110万円を引いていません。
問4
2026年の暦年課税の対象が一般贈与240万円、特例贈与380万円であり、他の贈与や特例等はない。二つの仮の税額計算に共通して使う基礎控除後の金額はいくらですか。
正解:510万円
- A:一般と特例それぞれから110万円を引いており、二重控除です。
- B:合計620万円から基礎控除110万円を一度引きます。
- C:基礎控除を引く前の合計額です。
05 要点をまとめる
- 贈与契約と課税年を分ける。
- 暦年課税は受贈者の年合計から基礎控除を引く。
- 一般税率・特例税率は関係と年齢を確認。
- 相続時精算課税は別制度で、選択後の扱いに注意。