ITで、社会や仕事はどう変わる?
紙のメニューをスマホで見せるところから、仕事や暮らしの変化を考えよう。
- 情報の形式の変換と、仕事や体験の変革を区別できる。
- 設備の自動化と、データで生産全体を柔軟にする変化を区別できる。
- 数値と人が決める目的・責任を合わせて判断できる。
点線のことばを押すと、意味と使い方を調べられます。
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このページの目次 4節・復習と3問
- 1説明を読む
- 2復習する
- 3問題を解く
- 4次へ進む
1文書をデータにすることから、仕事の変化へ
紙のメニューをスマホで読めるようにするなら、見た目を保って文書を保存・受渡しできるPDF(文書を保存・やり取りする形式)という形式を使う方法があります。メニューや説明書を渡す用途です。このように紙の情報をコンピュータで扱える形にするのはデジタル化の一例ですが、それだけで注文や調理の流れまで変わるとは限りません。
データやデジタル技術を使い、商品・仕事・組織などを変えて価値につなげる考え方がDX(デジタルトランスフォーメーション(デジタル技術による変革))です。予約と注文を厨房で共有し、受取体験を組み直すなら、何が変わるかを説明できます。図は違いを考えるための例で、すべてのDXが必ず同じ3段階を順番に踏むという意味ではありません。
PDFは、メニューだけでなく、商品の説明書、申込書、会議資料を配ったり印刷したりするときにも使われます。
街角の画面で案内や広告を表示するのはデジタルサイネージ、デジタル機器が身近な環境で育った世代を指す呼び方がデジタルネイティブです。どちらも、事業や仕事を変えるDXそのものを意味する言葉ではありません。
紙・PDF・仕事の変化を見比べよう
ハルとビットで、使い方を確かめよう
この説明に出てきた略語の正式名称
- Portable Document Format
文書を保存・やり取りする形式 - DX
- Digital Transformation
デジタルトランスフォーメーション(デジタル技術による変革)
2現実の情報を使い、社会や製造の仕事を変える
ここからは、お店一つの仕事から社会や製造業へ、見る範囲を広げます。交通や設備の状態を集め、コンピュータ上で分析して、現実の判断や制御に役立てる仕組みを考えます。このコンピュータやネットワーク上で情報を扱う側を、サイバー空間と呼びます。
現実の空間とサイバー空間を高度に結び付け、経済発展と社会課題の解決を両立する人間中心の社会を目指す考え方がSociety 5.0です。例えば交通の情報から、人が移動しやすい仕組みを考えます。一方、製造業で設備のデータやネットワークなどを使い、生産のあり方を変える考え方がIndustry 4.0です。
どちらも、技術を置くこと自体ではなく、何のために活用するかが大切です。
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)で機器の状態を集め、大量のデータやAI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用し、生産・サービスなどに大きな変化をもたらす動きを第4次産業革命と呼びます。
製造業を中心とするIndustry 4.0と関連しますが、産業や社会全体への変化を含む広い見方です。
コンピュータの処理能力が上がり、文章だけでなく画像・音声・機器の記録も扱えるようになると、人が全部を読み切れない量から傾向を探せます。人が「こうしたら便利では」と考える視点に、記録から困りごとや傾向を見つける視点を加えられます。
こうしてデータを判断やサービスに生かす社会を、データ駆動型社会と呼びます。AIの結果だけで目的や公平さまで決まるわけではなく、人が確かめ、使い方に責任を持つことも必要です。
製造では、注文情報と工場の設備をつなぎ、色や仕様の違う注文へ柔軟に対応する使い方があります。同じ物を大量に作るだけでなく、個別の希望に応じながら費用や納期も抑えることを目指します。第4次産業革命の問題では、単にコンピュータが機械を自動運転する段階から、データを連携して生産全体を柔軟に変える段階への違いに注目します。
- 1現実の空間
センサなどで交通や設備の状態を捉える
- 2
- 3現実へ返す
人の判断や設備の制御に役立てる
Society 5.0は、人間中心の社会に向けて経済発展と社会課題の解決を目指す考え方。単にセンサを置けば達成するわけではない。
ハルとビットで、使い方を確かめよう
交通の情報で移動しやすくする話と、工場の設備の情報で作り方を変える話は、見る範囲が違うのかな?
そうだね。Society 5.0は人間中心の社会を目指す考え方、Industry 4.0は製造業の変革に関わる考え方だよ。どちらも、何を良くするかが大切なんだ。
3機械ができることと、人が決めること
コンピュータの処理能力が高まると、多くの記録を速く集計したり、複雑な予測を試したりできるようになります。AIも画像の特徴の認識や文章の処理などを支えますが、人間の知性の全てをそのまま持つわけではありません。
データドリブンは、経験や勘だけに頼らず、データを判断の根拠として使う考え方です。ただし、何を良くしたいかを決め、数値に現れていない事情を考え、判断の結果に責任を持つことも必要です。
例えば販売記録だけなら『売れないメニューをなくす』と判断しそうです。しかし、それがアレルギーに配慮した唯一のメニューかもしれません。人が目的や事情を考え、データで確かめることを組み合わせます。
処理能力は、計算や記録の処理をどれだけこなせるかという力です。多数の店舗の販売記録を短時間で集計できれば、翌月を待たず、翌日の仕入れ判断へ生かすなど、仕事の進め方も変えられます。
4音を数字で表すことと、仕事を変えること
音の強弱など、連続的に変わる量で情報を表すものをアナログといいます。コンピュータで扱うため、一定の間隔で値を取り出し、決めた段階の数値へ近付け、符号で表すのがA/D(Analog-to-Digital:アナログからデジタルへの)変換です。
スマホで声を録音する際などに使われます。
この変換をしただけで、事業や生活が新しくなるとは限りません。たとえば問い合わせの声を記録するのはデータ化の一歩です。記録からよくある困りごとを調べ、案内や申込みの仕組みを変えて、利用者の手間を減らすところまで考えると、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)の価値につながります。
デジタルという語が付いても、デジタルデバイドは利用機会や能力などの格差、デジタルネイティブはデジタル機器が身近な環境で育った世代を指す言葉です。機器の変換処理、社会の格差、世代、変革のどれを説明しているかを読み分けます。
| 何を説明している? | 言葉 |
|---|---|
| 連続する信号を数字で扱える形にする | A/D変換 |
| 情報技術を利用できる人とできない人の格差 | デジタルデバイド |
| デジタル機器が身近な環境で育った世代 | デジタルネイティブ |
| 商品や仕事などを変えて価値を生む | DX |
音を録音する処理と、その記録を使って仕事を変える活動の範囲を区別。
ハルとビットで、使い方を確かめよう
声をスマホに保存できたら、それだけでDX?
保存は一歩だよ。そこから何を変えて、誰のどんな不便を減らすかも考えよう。
5環境への負担を減らす変化を考える
- 二酸化炭素など、地球を暖める働きのある温室効果ガスを減らすことを、仕事や社会の仕組みから考えます。
- 脱炭素などに向けて産業や社会・経済のあり方を変える取組がGX(グリーントランスフォーメーション(脱炭素に向けた経済・社会の変革))です。
排出を減らすだけでなく、吸収・除去する量も考え、差引きで実質ゼロにすることをカーボンニュートラルと呼びます。排出量そのものが必ずゼロという意味ではありません。また、IT(情報技術)機器自体の電力消費を抑えたり、ITを使ってほかの活動の環境負荷を減らしたりする考え方がグリーンITです。
例えば設備の情報から無駄な運転を減らす取組は、仕事の変化と環境への配慮の両方に関わります。
CFP(Carbon Footprint of Product:製品のカーボンフットプリント)は、原材料の調達から製造、運送、使用、廃棄・リサイクルまでに出る温室効果ガスを、二酸化炭素に換算して表す値です。この一連の流れがライフサイクルです。
飲み物なら店の電力だけでなく、容器の製造や輸送も含めて考え、比べる範囲と「1杯当たり」などの単位をそろえます。
例えば設備データで省エネを進める取組は、両方の観点に関係することがある。
ハルとビットで、使い方を確かめよう
目的や内容によっては、両方に関係するよ。データで仕事をどう変えるか、脱炭素へどうつなげるか、それぞれの観点から確かめよう。
カーボンニュートラルって、温室効果ガスを全く出さなくなること?
排出量そのものが必ずゼロという意味ではないよ。まず排出を減らし、吸収・除去する量も考えて、差引きで実質ゼロを目指すんだ。
この説明に出てきた略語の正式名称
- GX
- Green Transformation
グリーントランスフォーメーション(脱炭素に向けた経済・社会の変革) - IT
- Information Technology
情報技術
6便利さを、使える人に届けるには
働きたい人と人材を求める企業の出会いを、求人情報やオンライン面談が支えます。遠隔で働ける仕事は通勤できる範囲の制約を減らせますが、全ての仕事を遠隔化できるわけではありません。仕事の変化に合わせて学び直し、技能と求人の条件を合わせることも必要です。
教育では、離れた場所の授業を受けたり、理解度に合う教材を選んだりできます。一方、端末や通信環境がない、操作を教えてもらえないといった違いがあれば、利用できる人との格差が残ります。こうした情報技術を利用できる人とできない人の格差をデジタルデバイドといいます。
働きたい人と人を求める仕事の関係を労働市場の需給、人が仕事や職場を移る動きに関わる性質を流動性といいます。人口の増減や年齢構成などの変化が人口動態です。利用者の減った地域では、予約に応じて移動を支える交通を検討するなど、地域の課題に合わせた使い方を考えます。
| 見るところ | 具体例・考え方 |
|---|---|
| 就労 | 求人と技能の情報を結び付ける/学び直しも支える |
| 教育 | 授業を配信する/端末・通信・相談支援も整える |
| 確認 | 利用者の数だけでなく、使えない人の理由も調べる |
理解のための架空の例です。
7社会のデータ活用を支える、三つの法律
技術を使う仕組みだけでなく、社会としてどう進めるかのルールもあります。まずは次の三つの目的を区別しましょう。
- 官民データ活用推進基本法:「官」は国や自治体、「民」は企業などです。国・地方公共団体・独立行政法人・その他の事業者が業務で管理・利用・提供する電子的な情報などを、適切に活用するための基本的な考え方や役割を定めます。国の安全などを損なうおそれがある情報は除かれます。国のデータだけが対象ではありません。
- デジタル社会形成基本法:デジタル技術を活用する社会づくりの基本理念や役割を定めます。便利なサービスとともに、年齢や地域などによる利用機会・能力の差を小さくすることも重視します。
- 国家戦略特別区域法:決められた地域で、法律上の手続に基づく特例などを使って新しい取組を進める仕組みです。「スーパーシティ法」は通称で、先端サービスに向けたデータ連携や規制改革に関わります。地域の全ての規制がなくなる意味ではありません。
データを活用することは、個人情報を無条件に公開してよいという意味ではありません。目的、利用条件、個人の権利や安全を一緒に考えます。
| 見るところ | 具体例・考え方 |
|---|---|
| 官民データ | 公共交通のデータを、利用条件に沿って経路案内に使う |
| デジタル社会 | オンライン手続と、その使い方を学ぶ機会を整える |
| スーパーシティ | 組織をまたぐデータ連携で、地域の先端サービスを支える |
目的をつかむための例です。法令の概要は2026年9月10日確認。改正や具体的な適用は公式原文を確認してください。
参考:デジタル庁:官民データ活用推進基本法・デジタル社会形成基本法 ↗
ハルとビットで、使い方を確かめよう
官民のデータなら、個人の情報も何でも公開できるの?
できないよ。活用を進めることと、全てを無条件に公開することは別。権利や安全、利用条件も守るんだ。
復習
このパートを振り返ろう
声を電子ファイルにすることと、問い合わせの仕組みを変えることは何が違いますか。
顧客ごとの仕様へ短納期で対応するため、設備や注文の情報をつなぐのはなぜですか。
答え方と、確認するポイント
個々の機械を動かすだけでなく、注文と工程を連携させ、生産全体を変えるためです。Industry 4.0では、データやネットワークを使った製造の変革に注目します。
AIや売上の数値だけで、残す商品を決めてよいですか。
答え方と、確認するポイント
数値は重要な根拠ですが、利用者の事情や店の目的が全て表れるわけではありません。現場を確かめ、何を良くしたいかを決め、人が判断の結果に責任を持ちます。
問題で確かめる
実際の問題に挑戦しよう
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)公開過去問2問、入門の確認問題1問で、この範囲の考え方を使います。答えを選んだら、正解の理由とほかの選択肢の違いも確かめましょう。
ヒントを見る
選択肢が説明しているのは「格差」「世代」「信号変換」「変革」のどれだろう。
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3問中0問の答えと解説を確認しました。選んだ答えの理由も確かめてから、次へ進みましょう。
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学習範囲:IPA シラバス Ver.6.5 ↗ 項目1。身近な例・会話・図解・確認問題は当サイトのオリジナルです。