データを、仕事の判断につなげる
売れ残りを減らすには、集めた記録をどう使えばよいか考えましょう。
- 蓄積・集計と、有用な規則の発見を区別できる。
- 現実のモデルで条件を変える試算を選べる。
- 制約を満たす候補から最もよい案を選べる。
点線のことばを押すと、意味と使い方を調べられます。
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このページの目次 3節・復習と3問
- 1説明を読む
- 2復習する
- 3問題を解く
- 4次へ進む
1蓄積する・見る・発見する
売上の表と顧客の表が別々にあると、つなげて調べるのに手間がかかります。
- 分析のために複数の業務データを統合して蓄える仕組みがDWH(分析のためのデータを統合して蓄える仕組み)です。
- 集めたデータを集計・分析し、グラフなどで見える形にして意思決定を支えるのがBI(データの分析・可視化で意思決定を支える考え方・仕組み)です。たとえば曜日別の売上を比べ、店で売る商品や材料を買う、仕入れの判断に使います。
- さらに、大量のデータから有用な規則や関連を探すことをデータマイニングといいます。「この二つの商品が一緒に買われやすい」といった傾向を探す使い方です。
- 口コミなどの文章を対象にする場合はテキストマイニングと呼びます。
小さな売上表なら、表計算ソフトで①商品名と単位をそろえ、②月曜の行を絞り込み、③商品別に合計し、④1営業時間当たりの数へ直し、⑤棒グラフにして説明する例があります。大量の記録から何度も条件検索するならデータベース、場所の関係を調べるならGIS(地理情報システム)というように、道具を目的で選びます。
まず目的を決める。道具を使うこと自体をゴールにしない。
ハルとビットで、使い方を確かめよう
この説明に出てきた略語の正式名称
- DWH
- Data Warehouse
分析のためのデータを統合して蓄える仕組み - BI
- Business Intelligence
データの分析・可視化で意思決定を支える考え方・仕組み - GIS
- Geographic Information System
地理情報システム
2予測・分類・最適化
データを使って何を決めたいかによって、分析の方法は変わります。今後どれだけ買われるかを見積もる需要予測は、仕入れ量の判断に役立ちます。購入した商品の傾向が似ている顧客をグループに分ければ、案内する商品の検討に使えます。
配送に使える時間や車の台数など、守るべき条件を制約といい、その範囲で最もよい経路などを探すことを最適化といいます。また、条件ごとの分かれ道を木の形に表し、分類や予測に使うものが決定木です。「気温が高いか」「休日か」と順に分岐させる例を思い浮かべ、入力する情報と得たい結果を結び付けましょう。
使える時間が10分で、候補Aは8分・利益300円、Bは12分・利益500円、Cは10分・利益400円とします。一つだけ選び利益を最大にするなら、Bは時間制約を満たさず、AとCからCを選びます。最大の数字を選ぶ前に、守る条件を確認します。
決定木の単純な教材例なら「温かい飲み物か」で分け、はい→保温用の容器、いいえ→冷たい飲み物用の容器、と出力までたどれます。ここでは人が条件を置いた例で、データから分岐を学習する場合もあります。
3モデルは現実の一部を表す
実際の店で何度も試せないときは、必要な特徴を取り出した仕組みを使って考えます。この現実を簡単に表したものがモデルです。来店人数や接客時間を使い、待ち時間を試算するのが例になります。モデルを動かし、条件を変えて結果を確かめることをシミュレーションといいます。
同じ条件なら同じ結果になるものは決定論的モデルです。来店人数の変動など、不確かさを確率で扱うものは確率的モデルです。手元に残る商品の在庫や、待ち時間を複数の条件で試算して比べられますが、現実のすべてを再現するわけではありません。
予測と実際の結果の違いも調べ、改善に使いましょう。
モデルは現実の一部を目的に合わせて表したもの。結果と現実の差も確かめる。
ハルとビットで、使い方を確かめよう
それを使えば、明日の売れる数もぴったり分かる?
未来には分からないこともあるね。過去の売れ方から予測したり、雨の日など条件を変えて試算したりして判断するんだ。
晴れならこのくらい、雨ならこのくらい、と比べるんだね。
そう。仕組みを作って終わりではなく、実際の結果と比べて、仕入れ方や予測を見直そう。
4売り切れや、売れ残りを減らす
仕入れの注文では、いつ、どれだけ頼むかを決めます。在庫が決めた水準まで減ったら一定量を注文するのが定量発注方式で、注文のきっかけとなる水準を発注点といいます。一方、毎週月曜など一定の間隔で、そのときの必要量を見直して注文するのが定期発注方式です。
注文してから届くまでなどの所要時間をリードタイムといい、その間にも商品は売れていきます。予想より多く売れる場合や入荷が遅れる場合に備える在庫が安全在庫です。在庫を増やせば保管費や売れ残りも増え得るため、問題文の需要・納期などの条件を確認して必要量を計算しましょう。
定量発注の発注点を求める単純な例では、1日10個使い、届くまで3日、安全在庫5個なら10×3+5=35個です。これは注文を始める水準で、注文する個数そのものではありません。未入荷分を含むかなど、在庫の定義も問題文で確認します。
5いつ、いくつ注文すれば間に合う?
定期発注は、毎週月曜など決まった間隔で注文する方法です。安全在庫は、予想より多く売れるなどの変動に備える予備です。
今注文した分が届いても、次の注文分が届くまでは手持ちと入荷予定の分でまかなう必要があります。そのため、次回の発注分が届くまでの量を考えます。ここでは「発注間隔+調達リードタイム」の需要予測に安全在庫を足し、現在庫と発注済みで未入荷の数量を引きます。
1日10個売れ、発注間隔7日、届くまで3日、安全在庫20個、手元に50個、未入荷30個という条件なら、10×(7+3)+20−50−30=40個です。すでに頼んだ分を忘れると二重に注文してしまいます。
発注時期を逆算する問題では、使う日に間に合うよう、納期分だけ前へ戻します。金曜の開始時に必要で、発注から入荷まで3営業日なら、その条件の数え方に沿って火曜の開始時に発注する例になります。休日や当日の数え方は問題文で確認します。
今の在庫と、届く予定の数量を確認する。
ここで、次の発注をするわけではない。
発注間隔は7日。その注文が届くまで、さらに3日かかる。
今日から7+3=10日分の需要を考える。
届くまで3日、発注間隔7日の架空条件。次回分が届く直前までをカバーします。
| 見るところ | 具体例・考え方 |
|---|---|
| 必要な期間 | 次の発注まで7日+届くまで3日=10日 |
| 必要な量 | 10個×10日+安全在庫20個=120個 |
| 届く見込みも含めた量 | 現在庫50個+未入荷30個=80個 |
| 追加発注 | 120−80=40個 |
理解のための架空の例です。
ハルとビットで、使い方を確かめよう
もう頼んである30個も、引くんだね。
届く予定を忘れると、余分に頼んでしまうからね。在庫と未入荷分を分けて数えよう。
6まとめて頼むほど、得になる?
一度に多く注文すると、注文する回数は減ります。一方、手元に置く在庫が増えるため、保管費などは増えやすくなります。この二つの費用の合計が最小になる発注量を経済的発注量といいます。
需要が一定などの単純な条件では、年間発注費=年間需要÷1回の発注量×1回の発注費、年間在庫維持費=平均在庫×1個当たり年間維持費で計算します。安全在庫を置かず、入荷した在庫が均等にゼロまで減るなら、平均在庫は1回の発注量の半分です。
下の条件では候補の中で200個ずつが最も低い合計です。購入単価の割引や欠品の損失などを考慮する問題なら、それらの条件も加えて判断します。
| 見るところ | 具体例・考え方 |
|---|---|
| 条件 | 年間需要1,200個/1回の発注費1,000円/1個の年間維持費60円 |
| 100個ずつ | 発注費12,000円+維持費3,000円=15,000円 |
| 200個ずつ | 発注費6,000円+維持費6,000円=12,000円 |
| 400個ずつ | 発注費3,000円+維持費12,000円=15,000円 |
理解のための架空の例です。
7部品ごとに、足りなくなる時期を調べる
完成品を1個作るのに部品Aが2個、部品Bが1個必要だとします。完成品を毎週10個作るなら、毎週Aを20個、Bを10個使います。完成品の数を、そのまま全ての部品の必要数にはできません。
第1週の開始時にAが60個、Bが40個あり、週の開始時に必要量を使い、追加の入荷はまだないものとします。Aは第4週、Bは第5週の開始時に初めて不足します。発注から入荷までAは2週間、Bは1週間なら、Aは第2週開始時、Bは第4週開始時までの発注が必要です。
先に『不足する週』を求め、その後で『届くまでの週数』を引く順に計算します。入荷日と使用日の前後関係は、問題の条件を確かめましょう。
| 見るところ | 具体例・考え方 |
|---|---|
| 第1週末 | A:60−20=40個/B:40−10=30個 |
| 第2週末 | A:40−20=20個/B:30−10=20個 |
| 第3週末 | A:20−20=0個/B:20−10=10個 |
| 不足する週 | A:第4週開始時/B:第5週開始時 |
| 発注する週 | A:4−2=第2週/B:5−1=第4週 |
理解のための架空の例です。
8集計した後に、現場へ戻って確かめる
データサイエンスは、データを分析し、知識や判断に役立つ情報を引き出す取組です。分析の技術だけでなく、その分野の仕事を知るドメイン知識も必要です。
カフェの売上が月曜日だけ低くても、人気が落ちたとは限りません。月曜は営業時間が短いのか、品切れがあったのか、記録の漏れかを現場で確かめます。
「問いを決める→集め方を計画する→データを集めて整える→分析する→解釈して行動し、結果を見直す」と繰り返します。集計や図を作ったところで終わらず、元の困りごとに戻ることが大切です。こうした分析を担う人をデータサイエンティストと呼びます。
食品の廃棄を減らしたいなら、次のように一つの課題を最後まで追います。廃棄を減らしても、売り切れで買えない人が増えたら、別の調整が必要かもしれません。
データサイエンティストは、この例なら現場の担当者に営業時間や欠品の事情を聞き、集計結果と分かった範囲を伝え、次に試す改善を一緒に考えます。記録を蓄える基盤を作る役割、基準と証拠を照合する監査、情報を安全に守る支援とは、主に担う目的が違います。
どの曜日の、どの商品が残る?
製造数・販売数・廃棄数・営業時間を同じ単位で記録
空欄や表記の違いを確認。空欄を勝手に0にしない
曜日や商品を比較。営業時間の違いも確かめる
少し作る量を変え、廃棄と売切れを調べ、問いへ戻る
学習用の架空例。データと現場を往復して見直します。
9公開されていることと、再利用できること
オープンデータは、見るだけでなく加工や再配布などにも使えるルールで公開されたデータです。国の基本指針では、営利・非営利を問わず二次利用できること、機械判読に適すること、無料で利用できることの三つを満たすものとしています。
例えば施設の位置の一覧を使って案内地図を作れます。ただし、ネットで見られる全ての情報が自由に使えるわけではありません。出典の表示など、利用条件を確認します。
理解のための架空の例です。
10現場の知識と文献を合わせて確かめる
分析結果を説明するときは、その分野の知識や現場の観察に加え、信頼できる文献・公的統計なども調べます。データに現れた関係が、既に知られた現象と合うのか、調査条件の違いで生じたのかを確かめるためです。
例えば、暑い日に飲み物がよく売れた結果を考えます。売上記録だけでなく、同じ期間・地域の気象データ、店の営業時間、品切れや催事の記録を照合します。日ごとの記録と月平均をそのまま比較するなど、対象期間や集計単位が違う資料はそろえ方の検討が必要です。
文献に同じ傾向があっても、自分の店の原因が証明されたわけではありません。誰が、いつ、何を対象に調べた資料かを記録し、今回のデータで分かったことと、まだ確かめていない説明を分けて伝えましょう。
11傾向から予測することの強みと限界
いくつかの具体例から、共通する傾向や一般的なきまりを考えるのが帰納的推論です。晴れた日に冷たい飲み物がよく売れた記録から、次の晴れた日も売れそうだと考えるのが例です。まだ知らない傾向に気づける一方、観測した例が偏っていたり、季節や客層が変わったりすると当てはまらない場合があります。
すでに置いた一般的なルールを個別の条件に当てはめるのは演繹的推論です。「1杯500円で値引きなし」という条件なら、2杯の代金は1,000円と求める例です。
シミュレーションでは、予測だけで進めず、新しく観測した値をモデルに取り込んで状態を修正することがあります。これがデータ同化です。予報に実際の観測を取り入れる例があり、元のデータを都合よく書き換えることではありません。
例えばモデルが現在の気温を18℃と見積もり、新しい観測が20℃だった場合、データ同化では両者の不確かさなども考慮してモデルの状態を修正します。必ず単純平均19℃にする、必ず観測値に置き換えるという固定の計算ではありません。
架空の例。過去に当てはまったことが、将来も必ず成り立つとは限りません。
12移動の跡と、いまの状態を見える形にする
時刻ごとの位置を線で結ぶ軌跡の可視化は、配達などで通った場所を確認するのに役立ちます。ただし途中の位置を記録していなければ、線が実際に通った道路と一致するとは限りません。
機器などの状態を順次更新して見せるのがリアルタイム可視化です。異常に気づきやすくなりますが、表示の最終更新時刻や、記録が届いていない機器も確認します。止まった画面を『いまの状態』と思い込まないことが大切です。
図の数値を文字で確認
架空の位置記録。A地点9時00分、B地点9時10分、C地点9時25分。点を線で結んだ図。
| 機器 | 状態 |
|---|---|
| A | 稼働 |
| B | 停止 |
| C | 未取得(状態は不明) |
学習用の静止画です。実際の機器とは接続していません。
復習
このパートを振り返ろう
購買記録から一緒に買われやすい商品を探すことは、記録の保管と何が違いますか。
レジを増やす前にモデルで待ち時間を試すとき、結果を確定した未来と考えてよいですか。
最大の利益が書かれた案を、いつでも選べますか。
答え方と、確認するポイント
使える時間や資源などの制約を満たすかを先に確かめます。実行可能な候補の中で目的に合う最大・最小を探すのが最適化です。
問題で確かめる
学んだことを問題で確かめよう
入門の確認問題3問で、この範囲の考え方を使います。答えを選んだら、正解の理由とほかの選択肢の違いも確かめましょう。
ヒントを見る
大量のデータから、役立つパターンを探す。
オリジナル入門問題 · シラバス 6.5
3問中0問の答えと解説を確認しました。選んだ答えの理由も確かめてから、次へ進みましょう。
出典・参考資料を確認する
学習範囲:IPA シラバス Ver.6.5 ↗ 項目2。身近な例・会話・図解・確認問題は当サイトのオリジナルです。